江口 聡

臨床心理学研究科 臨床心理学専攻(専門職学位課程)講師
Last Updated :2025/10/28

■研究者基本情報

学位

  • 博士(心理学)

研究キーワード

  • 認知行動療法
  • 発達障害
  • 統合失調症

研究分野

  • 人文・社会, 臨床心理学, 統合失調症、発達障害、認知行動療法

■経歴

学歴

  • 専修大学大学院, 心理学研究科修士課程

■研究活動情報

論文

MISC

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 自閉症スペクトラム障害のある成人の発達障害検査入院における心理教育の効果検証研究
    奨励研究
    東京大学
    2017年 - 2017年
    近年、一般の精神科で成人になって診断される自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)が多く存在していると報告されている(Lehnhardt et al, 2012)。また、仲間からの孤立、疎外感や自信喪失等から二次的な障害を引き起こしやすく、気分障害や不安障害などの合併も多いことが報告されている(Joshi et al, 2010)。当院では成人で発達障害が疑われる方に対して、「発達障害検査入院」として発達障害としての診断、併存疾患の有無、本人の特性や今後についての心理教育を実施している。今回は、当院でASDと診断された方を対象にASDの心理検査の特徴と、それを受けて心理教育プログラムの効果について検討した。
    心理検査の結果としては、自記式のCES-Dにおいて気分障害圏に属するものが全体の76%、STAIで特性不安に該当するものが全体66%であった。しかし、ASDとの併存疾患で気分性障害と診断されたのは22%、不安障害と診断されたのは17%であった。認知機能の検査においては、WAISの群指数において言語理解が最も高く、処理速度が最も低い結果となった。WAISにおいて、言語理解は高いが、抽象的な概念の理解が難しい方が多い傾向が見られた。これについてはSCTやP-Fスタディを行うことが難しく、かなり時間がかかる方が多かったことについても抽象的な思考の難しさがあるのではないかと考えられる。予後調査では、自分の特性を知り具体的に動いている(「復職」、「休職」、「移行支援事業所の利用」、「社会参加」、「勉強」等)、ということが多く見られた。
    以上のことから、成人のASDにおいて認知的な傾向がある可能性が示唆された。また、一方で、行動を制止的にしてしまう要因に関わる可能性のある不安や抑うつ感を強く感じているものが多い。外来において、うつや不安を主訴に来院した場合に、その主訴のみではなくASDについて考慮することは重要だと考える。また、抽象的な思考の苦手さ、不安や抑うつが高いことによる行動制止の可能性から、診断だけでなく、具体的な心理教育を行うことが重要であると考えられ、診断を伝え、具体的な心理教育を行うことで、本人たちの生活が改善する可能性があると考える。
  • 自閉症スペクトラム障害のある成人の発達障害検査入院に関する効果検証研究
    奨励研究
    東京大学
    2016年 - 2016年
    近年、一般の精神科で成人になって診断される自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)が多く存在していると報告されており(Lehnhardt et al, 2012)、二次的に生じる問題から不安や抑うつを感じる方が多いと報告されている(Joshi et al, 2010)。当院では成人で発達障害が疑われる方に対して、「発達障害検査入院プログラム」として発達障害としての診断、併存疾患の有無、本人の特性や今後についての心理教育を実施している。今回は、当院でASDと診断された方を対象にASDの心理検査の特徴について検討した。
    対象は、プログラム利用者でASDと診断された60名の心理検査の結果について検討した。
    心理検査の結果としては、自記式のCES-Dにおいて気分障害圏に属するものが全体の76%、STAIで特性不安に該当するものが全体66%であった。しかし、ASDとの併存疾患で気分性障害と診断されたのは22%、不安障害と診断されたのは17%であった。認知機能の検査においては、WAISの群指数において言語理解が最も高く、処理速度が最も低い結果となった。また、CPTでは視覚刺激に対する注意指標において46%が平均から1SD以上であった。
    以上のことから、成人のASDにおいて自覚的な状態と、他者評価との違いが生じることも考えられる。外来において、うつや不安を主訴に来院した場合に、その主訴のみではなくASDについて考慮することは重要だと考える。また認知的機能において、一定の特徴が見られていることが考えられる。
    本研究の今後の発展としては、認知的な特徴をより詳細に検討することと、実施したプログラムから、診断だけでなく、具体的な心理教育を行うことがその後の本人たちの生活が改善する可能性が示唆されただめ、心理教育の効果についての検証が挙げられると考える。
    本研究については、第9回不安症学会で発表を行い、若手優秀演題賞を受賞した。
  • デイケアにおける統合失調症患者を対象としたメタ認知療法の効果研究
    奨励研究
    東京大学
    2014年04月01日 - 2015年03月31日
    メタ認知トレーニング(以下MCT)は、Moritzらにより開発された認知行動療法を基礎とする心理教育・心理介入技法である。MCTは統合失調症によく見られる認知的エラーや問題解決のバイアスに焦点を当てた8つのモジュールから構成されている。その有効性については、Moritzらの研究で示されている。
    H26年度は東京大学医学部附属病院精神神経科に通院中の22名の統合失調症患者に対して、MCTを実施した。各セッション後に被験者の感想を聴取し、KJ法を用いて感想の分類を行った。また、実施前および実施後に社会機能、精神症状、メタ認知、自己意識に関する自己記入・他者記入の質問紙を行い、統計的解析を行った。被験者の感想については、「認知バイアス理解因子」、「自己洞察因子」、「対処因子」に分類された。MCT施行前後の結果については、他者記入式のGAF、PANSS陽性症状、PANSS総合精神病理、PANSS陽性尺度(5 factor model)、PANSS陰性尺度(5 factor model)、PANSS core delusion scoreにおいて有意な改善が認められた。また、自己記入式では自尊心において有意な改善が認められた。
    本研究は、先行研究と同様に陽性症状への効果が確認された。一方で、Moritz et al. (2014)の報告で示された3年後の自尊心の改善が、MCT直後の結果として確認された。同時に、陰性症状の改善もMCT直後で確認されている。感想の分析から、対象者に「認知バイアス理解-自己洞察-対処」の意識があることが考えられる。また、自尊心の改善から、自発的に社会に働きかけることが陰性症状の改善につながり、従来MCTの報告で示された陽性症状の改善と並行して見られた可能性が考えられる。本研究で得られた知見は臨床群のみの介入研究であるため、今後は対照群を設定し、その効果について検討する必要があると考える。
    結果の詳細については、第10回日本統合失調症学会にて発表を行った。

■大学教育・資格等情報

主な担当授業科目名

  • 臨床心理査定演習Ⅱ

資格、免許

  • 2010年04月01日
    臨床心理士, 第32回臨床心理士資格認定審査合格
  • 2019年04月01日
    公認心理師, 第1回公認心理師資格試験合格
  • 2018年04月01日
    精神保健福祉士, 精神保健福祉士資格試験合格