大村 浩靖
人文社会学部 経営学科 経営コース | 教授 |
Last Updated :2025/06/19
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論文
- 「日本におけるコーポレートガバナンス改革の意義」
単著, 日本のコーポレートガバナンス改革の意義を、エージェンシー理論で再構成する。ガバナンス問題の本質は、取締役へ委託された経営を株主がモニタリングする仕組みをどう構築するかにかかっているが、これは、両者の関係をエージェンシー関係と捉え、その利害関係を調整するエージェンシー問題に帰結する。本稿では、上記改革の意義を、エージェンシーコスト削減に向けた取組みとして、再構成し、問題点と解決策を提言する。, 日本ファイナンス学会第28回大会 報告論文, 2020年06月 - 「コーポレートガバナンス改革後のスチュワードシップ活動とエージェンシー問題」
単著, 機関投資家によるスチュワードシップ活動は、株主代表として、機関投資家が、企業が実施するガバナンス改革の進捗状況をモニタリングしながら、積極的な企業とコミュニケーションを通じて、その持続的成長を目指すための責任分担の仕組みと理解できる。本稿では、コーポレートガバナンス推進に不可欠の役割を担う、運用会社におけるスチュワードシップ活動改善に関する問題点とその改善策を提言する。, 証券経済学会年報 第55号別冊, 2020年12月
その他研究業績
- 日本ファイナンス学会第28回大会 論文発表 「日本におけるコーポレートガバナンス改革の意義」
その他(発表学会等), 2020年06月, 日本ファイナンス学会(オンライン開催), 2013年以降日本で進められたコーポレートガバナンス改革の意義を、エージェンシー理論に基づいて再構成する。株主が取締役を選任し会社の経営を委託し、その経営をモニタリングする仕組を定めるガバナンスの問題は、両者の関係をエージェンシー関係と捉え、その利害関係を調整するエージェンシー問題に帰結する。コーポレートガバナンスをめぐる諸問題は、最終的にエージェンシー問題を如何に解決するかの問題に他ならない。エージェンシー理論は、株主をプリンシパル、経営者をエージェントと構成し、エージェントの業務遂行がプリンシパルの利害から解離することから生じるエージェンシーコストを如何に最小化するか、を考察するものであり、このコスト最小化の取組みの観点から、今回のコーポレートガバナンス改革を論理構成し、その意義を考察する。
今回の改革は、これまで会社法に採用されてきた、様々なエージェンシーコストを削減する仕組をさらに進めるもので、スチュワードシップ報告書で効果が確認できる段階になった。具体的には、業界知識を持ち専門性の高い機関投資家が企業とのエンゲージメント活動を進めることにより、株主がこれまで積極的に行ってこなかった議決権行使の活発化、取締役会の独立性・多様性の向上による利益相反の減少、機関投資家と経営者の協議による経営改善効果など、結果としてエージェンシーコスト削減につながる取り組みとなる。日本版スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンスコードの導入は、機関投資家に改革のモニタリング責任を課し、両コードを梃子に、企業の中長期成長と収益性向上を目指しているが、両コードをつなぐ役割を果たす、運用会社によるスチュワードシップ活動が効果発揮に重要な要素となる。
本稿では、第一に、日本の歴史的観点、米国との比較の観点を取り入れ、コーポレートガバナンスをめぐる議論を再整理する。次に、コーポレートガバナンス改革の意義を、上記のエージェンシーコスト削減に向けた取組みとして、エージェンシー理論に基づいて再構成し、その効果が期待できることを示す。最後に、改革の結果により、運用会社に起きる今後の動向や変化を予想し、その解決策を提案する。解決策には、機関投資家と企業のスチュワードシップ活動の開示が重要なポイントとなり、海外の事例を踏まえた開示方法を考察する。 - 証券経済学会 第92回全国大会 論文発表 「コーポレートガバナンス改革後のスチュワードシップ活動とエージェンシー問題」
その他(発表学会等), 2021年09月, 証券経済学会, 日本のコーポレートガバナンス改革は、日本版スチュワードシップコードの導入により、機関投資家にスチュワードシップ責任を課し、企業によるガバナンスの実行状況をモニタリングさせる点に特徴がある。コーポレートガバナンスコードは”Comply or Explain”の原則のもと、ガバナンスの実践主体である企業に裁量の余地を残し、コーポレートガバナンス実践に対する自発的運営を求めている。一方、機関投資家、具体的には、顧客資金を運用する運用会社と運用資金の管理を行うアセットオーナーに対して、運用資金のスチュワードとして、委託された運用資金の「中長期的な投資リターンの拡大を図る責任」を課している。その際には、「投資先企業やその事業環境等に関する深い理解のほか運用戦略に応じたサステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)の考慮に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、「当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより」、行う。運用会社がスチュワードシップ責任を果たすには、運用戦略に応じて企業に対するエンゲージメント活動を実施するよう要請されており、エンゲージメント活動実施を通じたスチュワードシップ責任が重要となる。元来、運用会社は、顧客や受益者の資金運用において、受託者として果たすべき受託者責任が課されており、運用を行う際には、これに基づく善管注意義務を果たす必要がある。この点、スチュワードシップコードは、この受託者責任を改めて明文化し、その義務履行に、エンゲージメント活動をはじめとする企業側とのインターラクションを通じた行動とその実行状況の開示を要請している。運用会社と企業とのインターラクションという観点では、株主による行使が予定されている、株主総会での議決権行使、株主総会への出席、株主総会での発言、株主議案、などを、株主に代わって行使する側面と、インベスターリレーションミーティング参加、個別ミーティング、のような運用プロセスの一環の側面の両方が含まれる。本報告では、機関投資家のスチュワードシップ責任を、企業によるガバナンス改革の進捗をモニタリングし、企業とのコミュニケーションを通じた、持続的成長に対する責任分担の仕組みと捉えた上で、エージェンシー理論の枠組みに基づく、運用会社におけるスチュワードシップ活動に対する提言を行う。 - 世界のコーポレートガバナンス比較(仮称)出版協力
共著, 2024年06月, Clea Beatriz Macagnan教授(Senior Professor Ph.D. Program in Finance Accounting and Professional Master's in Law at the University of Vale do Rio dos Sinos)が出版を予定している、世界各国のコーポレートガバナンス比較の本の日本部分を担当予定。