桑形 麻樹子

健康医療スポーツ学部 医療スポーツ学科 動物医療コース教授
Last Updated :2025/10/07

■研究活動情報

論文

MISC

講演・口頭発表等

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 間葉系幹細胞へのストレスによる骨関節疾患発症メカニズムの解明
    基盤研究(C)
    2017年04月01日 - 2020年03月31日
    前年度、妊娠5.5~11.5日のWistarラットの給餌量を対照群の40%に制限した低栄養群と対照群の産仔において、生後12週齢で卵巣摘出術(OVX)もしくは偽手術(sham)を行い、対照OVX群、対照sham群、低栄養OVX群、低栄養sham群の4群を作成している。また、これら4群が24週齢(術後12週齢)ならびに34週齢(術後24週齢)になった時点で材料採取を行った。これをもとに、骨・関節疾患関連ならびにメタボリックシンドローム関連の解析を進めていった。
    骨・関節疾患関連の解析として、骨ならびに関節軟骨の断片化が術後どのように変化しているかを確認した。術後2・4・6週に採取した血清中のCTX-Ⅰ量ならびに尿中のCTX-Ⅱ量に4群間で有意差が認められなかったことから、術直後より術後6週間の経過の中では、低栄養OVX群の骨吸収率ならびに軟骨ターンオーバー率は他群と比べ大きな差が認められないことが分かった。
    メタボリックシンドローム関連の解析としては、対照群と低栄養群の肝臓を採取し、肝細胞の培養実験を行った。対照群ならびに低栄養群から採取した肝臓から肝細胞を単離し、培養実験にてE2への反応性を確認したところ、両群間で有意差は認められなかったものの、低栄養群の肝細胞はE2を添加しなかった場合の脂肪蓄積量が高い傾向を示し、低栄養群の肝細胞は脂質代謝異常を来すことが示唆された。
    これらの成果は、学会発表(第7回日本DOHaD学会学術集会.2018.)で発表した。
  • マルチオミックス解析アプローチによるDOHaD説に基づく新生児脳の解析
    基盤研究(C)
    筑波大学
    2017年04月01日 - 2020年03月31日
    本研究では新生児期の低栄養暴露が生後に増加に転じる“Catch up growth”が肥満、糖代謝異常、うつ病などの疾患発症リスクを高めることが知られていることから、新生児期の低栄養環境による脳への影響をマルチオックス解析により明らかにし、既に行った胎児期脳のデータとの比較を行うことでより信頼性の高いリスク因子を同定することを目的としている。


    今年度は新生児期低栄養暴露およびLPS投与した新生児期マウスより脳組織(前頭皮質と海馬)のマイクロアレイ解析から得られた遺伝子リストの解析を進めた。パスウェイ解析や生物学的な分類を行った結果、低栄養暴露の前頭皮質においてはセロトニン受容体、ドーパミン受容体、GABA受容体、神経栄養性チロシンキナーゼ受容体、NMDA受容体の遺伝子発現の増加が確認された。さらに低栄養暴露の海馬ではアドレナリン受容体、ドーパミン受容体の遺伝子発現の増加が確認された。これらGタンパク質共役受容体の異常発現は統合失調症、うつ病、自閉症など主要な精神疾患に関与していることから、今後は他のGタンパク質共役受容体を含めたより詳細な解析を進める。現在、LPS投与した場合の遺伝子発現の比較検討を進めている。さらに既に得られている胎児期低栄養暴露における脳のマイクロアレイ解析データとの比較も進めており、睡眠障害に関わる遺伝子やRAN結合タンパク質を中心に新生児期と胎児期での関連性のある遺伝子についても明らかにする予定である。
  • 発達期の栄養環境変化による個体の脆弱性形成のメカニズム
    基盤研究(C)
    昭和大学
    2015年04月01日 - 2019年03月31日
    胎児期の低栄養は生活習慣病の発症リスクを増加させ、生後の制限はリスクを減少させる、即ち、出生前後で低栄養に対する影響が逆転することに着目し、21個の遺伝子を選抜した。
    C57BL/6Jマウスの生後1週間、母動物を低栄養曝露した児マウスを用いて、リポポリサッカライド(LPS:Toll様受容体4を刺激し炎症を起こす)を生後11週に投与し、変化する遺伝子を見出した。OATP family トランスポーター(Slco2b1)は新生児期の低栄養の影響をまた、生後11週まで受けていた。LPS投与により、Lrtm1, Mrap, Il1b, Slco2b1の発現が異なったことから、責任遺伝子と考えられた。
  • 新生児期の栄養環境変化に着目した発達障害ならびに成人期疾患発症機序の解明
    基盤研究(C)
    昭和大学
    2012年04月01日 - 2015年03月31日
    出生前の胎児にとっては悪影響をもたらす栄養制限が生後環境では良い効果をもたらすという逆作用に着目し、C57マウス新生児期の栄養環境変化(50%給餌制限あるいは60%高脂肪食摂取)に起因した成人期疾患発症リスクに関与する責任候補遺伝子群の選抜を試みた。
    肝臓の遺伝子解析の結果から、新生児期の栄養環境の変化は新生児期の栄養環境変化初期には摂取エネルギーに非依存的に自然免疫系(Fos、Il1b、Rgs1、Ppp1r3g、Hamp、Igll1)が優位になること、離乳時にはアセトアルデヒドの分解能が低下(Aldh1a7)することが考えられた。また、免疫組織の発達にも影響を及ぼすことが示唆された。
  • バルプロ酸投与による胎児脳のヒストン修飾と新生児期神経回路へ及ぼす影響
    基盤研究(C)
    昭和大学
    2009年 - 2011年
    妊娠初期バルプロ酸(VPA)服用により出生児に見られる自閉症の発現機序を解明するために、VPAの薬理作用の一つであるヒストン脱アセチル化酵素阻害作用に注目し、VPA投与後の胎児脳におけるヒストン修飾とVPA投与後に胎児脳に発現する形態異常との関連性を調べた。SD、F344、WKラットを用いて検討した結果、胎児脳に認められる大脳皮質における細胞移動障害には系統差はなかったが、中脳の神経走行異常発現には系統差がみられたことから、VPA投与による一部の胎児脳への影響には遺伝的要因が関与するものと関与しないものがあることが明らかになった。また、胎生期VPA投与後のラット新生児期の神経回路を調べた結果、生後11日齢で既に恐怖性が高まっていることが明らかになった。なお、本研究ではVPAのHDAC阻害作用と胎児脳に発現する形態異常との関連性の有無を明らかにすることはできなかった。
  • 子宮内化学物質暴露による誘発される脳発達障害の新しい評価法および臨界期の解析
    基盤研究(C)
    昭和大学
    2005年 - 2006年
    本研究は、行動試験において容易に異常が検出できる多動性障害モデル(胎生期5-brom-2'-deoxyuridine, BrdU曝露)と、難易と考えられる自閉症モデル(胎生期バルプロ酸VPA曝露)を用いて、化学物質曝露直後の胎児脳への影響を組織形態学的に検討し、脳発達障害研究における胎児脳観察の評価法としての有用性を検討するとともに脳発達障害の臨界期の解析を目的とした。
    BrdU(50mg/kg)のラット妊娠9-15日投与により、出生児に多動性が観察されることを既に我々は報告していることから、本研究では、曝露時期を神経管閉鎖前後に分割し、多動発現の臨界期および胎児脳への影響を検討した。その結果・臨界期は神経管閉鎖後に存在したがその期間は比較的広く、行動への影響は総投与日数に依存することが明らかになった。また、曝露直後の胎齢16日の胎児脳観察では、生後に多動性障害が認められたBrdU曝露時期(妊娠11、12、13日投与および妊娠14、15日投与)において大脳皮質皮質板(CP)の形成異常が認められ、その障害は多動性発現の臨界期と一致していた。
    自閉症モデルとして、既報に基づき800mg/kgのVPAをラットの妊娠9あるいは11日に経口投与し、妊娠16日の胎児脳を観察した。その結果、妊娠9日投与により胚死亡率が対照(生理食塩水)群と比較して増加し、両VPA投与群ともにCPの形成異常が認められた。さらに妊娠11日投与により、橋正中部の縫合不全が認められ、同部のセロトニン細胞の移動阻害、橋正中部の神経突起の交差阻害1が観察された。
    本研究結果から、2つの脳発達障害モデルの胎児脳観察において神経毒性が検出可能であり、生後観察を補強しうる新たな脳発達障害の評価法となりうる可能性が示唆された。また、臨界期を考慮した試験計画の導入により、脳発達障害の臨界期の存在はより明確になると考えられた。

■大学教育・資格等情報

主な担当授業科目名

  • 動物薬理学Ⅰ

資格、免許

  • 獣医師
  • 日本毒性学会認定トキシコロジスト